「仙台市の酒文化を味わうガストロノミーツアー」1日目レポート(後半)

こんにちは!KURAFT編集部のOです。
前回の「1日目レポート(前半)」では、ツアーに参加したきっかけや、ブルワリー・ワイナリーでの見学体験をお届けしました。
まだ読んでいない方はこちらからどうぞ↓
今回はその続き、1日目の後半をご紹介していきます。
■贅沢!高級老舗旅館
秋保ワイナリーでの収穫体験を終えたあとは、宿にチェックイン。
立派な門構えの前では女将さんが出迎えてくださり、「旅館に来た!」という実感が一気に高まります。
中に入ると、豪華で美しいエントランスにまず驚きました。金屏風が目に飛び込み、その奥には川が流れ、優雅に鯉が泳いでいます。
少し探索してみると、伊達政宗のねぶたやハープ、ピアノまで置かれていて驚きの連続でした。
そして後日知ったのですが、佐勘には資料館もあり、伊達政宗ゆかりの貴重な資料や、本物の甲冑・刀も展示されていたそうです。
うっかり見逃してしまったのが悔しい…!次回訪れるときは必ずチェックしようと思います。


・ロビーで鍵を受け取り、いよいよお部屋へ
今回泊まるのは、佐勘にある「3つの館」の中で最上グレードにあたる飛天館です。
重厚な鍵を手に、エレベーターで8階へ。扉を開けると、広々とした眺めのいいお部屋が待っていました。障子を開けると、秋保の豊かな緑が一面に広がり、とても清々しい気分に。

・ひと息ついて荷物を置いたあとは、さっそく温泉へ
秋保温泉は全国的にも知られる名湯で、日本三御湯(にほんさんみゆ)のひとつに数えられています。歴史は古く、古墳時代の後期、第29代欽明天皇(在位539~571年)がどこの湯でも治らなかった皮膚病を、この秋湯の湯で癒やされたのが始まりだそうです。その後は伊達家の御殿湯として栄え、政宗公をはじめ歴代藩主も訪れたと伝えられています。
佐勘には、そんな秋保温泉を堪能できるお風呂が4つあります。
眺めがよく広々とした「大浴場(1階・地下1階)」、伊達政宗公が湯浴みをする際に外敵から身を守るために造られた湯殿を再現した「名取の御湯」、そして名取川を眼下に望む渓流沿いの源泉かけ流し露天風呂「河原の湯」。
私はその中から「名取の御湯」を選びました。地下3階にある温泉へ向かうと、まるで異世界に迷い込んだかのような回廊が続きます。その先には趣のある暖簾がかかっていて、くぐった瞬間から気持ちが高まります。
温泉は無色透明で、格子越しに差し込む光がやわらかく、心まで解きほぐされるようでした。さらにその日は色とりどりの花が湯に浮かんでいて、特別感のある優雅な時間を味わえました。
今度訪れるときは、残りの2つの温泉もぜひ体験してみたいです。

■秋保ワイナリーでの絶品ディナ―
心身ともに癒されてお部屋でひと休みしたあと、再びバスに乗ってディナーのために秋保ワイナリーへ向かいました。
昼間は強い日差しと暑さに包まれていたのに、夜になると急に冷え込み、思わず身震いしてしまうほど。その温度差には驚かされます。
秋保ワイナリーにはバーベキューやマルシェのための広い庭園があるのですが、夜はライトアップされ、豊かな緑と澄んだ夜空が合わさってとても特別な雰囲気に包まれていました。
そんな中、秋保ワイナリー代表の毛利さんが注いでくださったのは「バンジーシードル」。ワイン仕立てのシードルで、爽やかで飲みやすく、食前酒にぴったりの一杯です。お風呂上がりということもあり、思わずごくごく飲んでしまいました。


レストランに入ると、テーブルは長テーブルのように連結され、グラスやカトラリーもセッティングされていて、昼間のカジュアルな雰囲気とは一変。落ち着いたディナーの空気に包まれていました。
毛利さんと同じテーブルを囲み、直々にワインの説明をしていただけるという、なんとも贅沢な時間。
食事が始まる前には、仙台市が力を入れている「仙台産今朝採り枝豆」が登場しました。
その名の通り、朝に収穫した枝豆をその日のうちに味わえる特別なもの。しかも茹でではなく、旨みを逃さないように蒸して提供されます。運ばれてきた瞬間から香ばしい香りが立ち上り、口に入れると驚くほど甘みが広がりました。
こんな枝豆がスーパーで手に入るなんて…仙台に暮らす人たちが羨ましくなってしまいます。


毛利さんの乾杯の挨拶とともに、ワインとペアリングされたディナーコースがスタートしました。
この日のメニューはこちらです。
・塩釜産マグロのタルタル
・秋刀魚のコンフィ 七ツ森舞茸のソテー イチジクとセルバチコのサラダ
・湯上り娘とササニシキ新米のスペイン風おじや
・かぼちゃのニョッキ スカモルツァアフミカータチーズのソース
・岩出山産猪の肩肉 秋保ワイナリー自社農園のピノグリ&ゲヴェルツトラミネールの搾りかす風味
・枝豆のパンナコッタと桃のジェラート
どのお皿も本当に美味しく、印象に残るものばかり。ここから一品ずつ感想を書いていきたいと思います。
・塩釜産マグロのタルタル
グリルしたパン・ド・カンパーニュの上に、マグロのタルタルがのった一皿。仕上げには毛利さんが目の前で“瞬間スモーク”をしてくださり、会場が一気に盛り上がりました。
スモークに使われているのは、赤ワインを入れていた樽を再利用したチップ。直接嗅がせてもらうと、ほんのり赤ワインの香りが漂い、ワイン造りの背景を感じられる特別感がありました。
ひと口食べると、パンの素朴で香ばしい風味と、マグロの濃厚でねっとりとした旨みが口の中で重なり合います。そこにほのかなスモークの香りが加わることで、味に奥行きが出て、とてもおいしくいただけました。
ペアリングは「NEO TRAIL SPARKLING」。きめ細やかな泡とフルーティーな香りが心地よく、“新たな挑戦”と“ワインを楽しむ”をコンセプトにしたシリーズです。人気が高く、今は残念ながら販売されていないそう。
ラベルデザインもユニークで、秋保ワイナリーのぶどう畑や景勝「磐司岩」、秋保に生息すると言われるイヌワシまでポップに描かれていて、思わず手に取りたくなる可愛さでした。


・秋刀魚のコンフィ 七ツ森舞茸のソテー イチジクとセルバチコのサラダ
舞茸は宮城県黒川郡大和町・七ツ森の麓で育ったもの、イチジクは秋保産、セルバチコはざおうハーブで栽培されたもの。地元食材が一皿に集まっているのも嬉しいポイントでした。
低温の油でじっくり煮込まれた秋刀魚はふっくらとやわらかく、甘酸っぱいイチジクや香り豊かな舞茸と重なり合い、とても満足感のある味わいでした。
合わせるワインは、先ほどと同じ『NEO TRAILシリーズ』のオレンジワイン。デラウェアとネオマスカットをブレンドし、無濾過で瓶詰めされたもので、白ワインよりも少し複雑な酸味があり、秋刀魚との相性もぴったりです。
そしてここでもう一つ印象に残ったのがパン。マグロのタルタルを食べたときにも思ったのですが、とにかくパンが美味しいんです。こちらは仙台の天然酵母パンのお店「オ フルニル デュ ボワ」さんのもので、香ばしさと奥行きのある味わいが料理をしっかり支えていました。


・湯上り娘とササニシキ新米のスペイン風おじや
運ばれてきてまず驚いたのは、その鮮やかな緑色。バジルなどのハーブの色合いらしく、とてもお洒落な一皿でした。
枝豆「湯上り娘」は仙台市泉区・田代農家さんのもの。さらにお米には仙台のササニシキ新米が使われています。秋保ワイナリーのシェフはイタリアンが専門だそうですが、地元米を活かすためにあえてスペイン料理に挑戦されたとのこと。専門外とは思えないほど完成度が高く、とても美味しかったです。
(ちなみに仙台では、このササニシキ新米が10キロ4,000円ほどで買えるのだとか…地元の方が羨ましい!)
合わせるワインは「AKIU FIELD BLANC」。秋保ワイナリーのぶどうを100%使用した辛口の白ワインで、フルーティーな香りに酸味とほのかな苦みがあり、おじやとの相性もぴったりでした。
ラベルデザインも印象的で、秋保にある世界初の万華鏡専門美術館にちなんで、万華鏡をモチーフにしているそうです。


・かぼちゃのニョッキ スカモルツァアフミカータチーズのソース
実はニョッキ好きの私、この一皿はメニュー表を見たときからとても楽しみにしていました。
かぼちゃの自然な甘みが感じられるニョッキに、とろりとしたミルキーなチーズソースが絡みます。さらに香り高くフレッシュなオリーブオイルが全体をまとめていて、一口ごとに幸せな気分になりました。
ペアリングは白ワイン「Chardonnay Barrique」。トロピカルを思わせる華やかな香りがあり、濃厚なチーズソースと抜群に合っていました。
ボトルのデザインにも遊び心があり、秋保の豊かな自然やそこに暮らす動植物が描かれています。ワインの味わいと同じく、眺めているだけでも気持ちが華やぐようでした。


・岩出山産猪の肩肉 秋保ワイナリー自社農園のピノグリ&ゲヴェルツトラミネールの搾りかす風味
香り豊かなオイルでじっくりと低温調理された猪は、力強さを残しながらもやわらかく上品な味わいに仕上がっていました。
シェフが見せてくださった漬け込み用のオイルには、ワインの搾りかすがたっぷり漬け込まれていて、土地の恵みをそのまま閉じ込めたような一皿。猪は県内の大崎市岩出山町産で、まさに地域の魅力が詰まっていました。
ここで合わせるのは赤ワイン「AKIU MERLOT」。自社農園で育てたメルローを100%使用し、オーク樽で約12か月熟成させた辛口の一本です。
時間をかけて仕上げられた料理と、じっくり熟成させたワインの組み合わせは、とてもバランスがよく心に残りました。


・枝豆のパンナコッタと桃のジェラート
枝豆のパンナコッタの上には「ずんだ」が添えられていて、甘さ控えめでとても食べやすく仕上がっていました。枝豆の新しい魅力を感じられるデザートです。
桃のジェラートは濃厚ながらも口当たりが軽く、食後にぴったり。爽やかに締めくくってくれました。
さらに、この日のお昼に収穫したものと同じサンジョヴェーゼもお皿に。実際に食べてみると、とても甘くて驚きました。ワイン用のぶどうは食用よりも甘みが強いのだそうです。
そして食後の締めくくりには「夜ぐっすり眠れるように」と、ハーブティーまでペアリングされていました。その心配りに思わず感動し、温かい気持ちでディナーを終えることができました。

今回のディナーを通して、仙台市がこんなにも山や海、そして清らかな水に恵まれ、多彩な食材にあふれていることを改めて知ることができました。
地元の恵みを生かし、「もっと多くの人に知ってもらいたい」という想いから生まれたワインや料理には、その土地ならではの物語が込められていて、一皿ごとに心が動かされました。
ただ美味しいだけでなく、生産者や作り手の想いまで感じられる体験は本当に特別で、仙台の魅力を深く味わえた夜になりました。
食事を終えて宿に戻ったあとは、Hさんと夜遅くまでテレビを観ながら色々なお話をしました。普段なかなかじっくりとお話しする機会がなかったので、こうして同じ時間を過ごせたことがとても嬉しく、学びも多くありました。管理職として常に忙しくされているHさんですが、穏やかにお話しされる姿にあらためて尊敬の念を抱きました。
さて、1日目レポート(後半編)も熱が入り、思わず長くなってしまいました。最後までお読みいただきありがとうございます!
次回の2日目レポートでは、秋保大滝を訪れた話や、歴史あるニッカウヰスキー工場の見学についてご紹介します。
引き続きお読みいただけると嬉しいです!