「映画『PERFECT DAYS』聖地巡礼で東京下町を歩く|餃子とビールと2万歩の一日【前編】」
映画『PERFECT DAYS』。
ドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダース監督が東京を舞台に撮った作品で、トイレ清掃員、平山の日常が淡々とした描写で映し出されます。細かくは書きませんが、観終わると「自分自身を見つめ直すきっかけになる」、そんな映画です。(公開は2023年)
カンヌで役所広司が最優秀男優賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネート。世界中でヒットした作品なのですが、その威力を実感したエピソードも、ブログの後編に書く予定です。
さて。そんな映画の聖地を巡ろうと、学生時代からの友人の一人が声をかけてきました。だいぶ前に企画されていたものの、延び延びになってようやく実現したかたちです。同行は3人。折しも季節は春。東京の桜も開花が進んでとてもいい時期です。「聖地巡礼」とは書いていますが、目的の半分は昼からの“飲み”だったりします(笑)
3月29日、亀戸駅に集合。
待ち合わせは13時。まず向かったのは「亀戸餃子」。昼を少し外した時間帯にもかかわらず相変わらずの人気で、「30分ほどお待ちいただきます」と言われる。待っている間にも後ろに行列が伸びていくが、ここは回転も速く、意外とすんなり席に通された。
腹ごしらえという名目ですが、開幕からビールを頼んでいる時点で、すでに飲み会は始まっている。小ぶりで何皿でもいけるタイプの餃子を、一人あたり3皿(15個!)たっぷりいただきました。

鋭気を養ったところで出発。天気もよく、まずはすぐ隣の香取神社、その後に亀戸天神という順番でのんびりお参りします。亀戸天神のそばに香取神社があることを今回初めて知りました。当然、“あの”香取神宮の分霊らしいのですが、なぜここにあるのかは特に調べもせず(笑)。まあいいか、と先に進みます。

平山のアパートへ
亀戸天神を出て少し北上すると、今回の巡礼のメインイベント、平山が暮らす木造アパートのあるあたりに差しかかります。

正直なところ、多少は“映画用に整えられている”のだろうと思っていましたが、実際に見てみると、驚くほどそのままでした。時間が止まっているような、あの質感。静かで、どこか生活の気配がある。ホウキの音で目覚めるあの道も、本当にアパートのすぐ隣の天祖神社からのものでした。
そして同時に、自分たちがいる間にも、ひっきりなしに同じ目的の人が訪れていました。ポツポツと、でも途切れることなく。映画の公開からずいぶん経つのに、まだこんなに人が来るのか、と少し驚きます。

そんな中、うっかり敷地の駐車場に足がかかってしまいました。
その瞬間、二階の踊り場にいた住人の女性から「敷地内には入らないでください」と声がかかります。慣れた——本当に慣れた感じの、平坦な声で。怒っているというより、もう何百回もそう言ってきたのだろうな、というトーンでした。
映画の舞台になったことで、見ず知らずの人間が日々押しかけてくる。住民の方にとっては、たまったものではないはずです。。大変申し訳ない気持ちになりました。本当にすみませんでした……。
隅田川の土手から桜橋(X橋)へ
アパートを後にして十間川沿いを北上し、押上へ。
本当は平山行きつけの“銭湯(電気湯)”やフィルムを現像する文具屋(十字屋)なんかも行きたかったのだが、今日の行程と残り時間を考えて割愛。また次の楽しみにすることにした。
このあたりはどこからでもスカイツリーが見えます。でも面白いのは、ソラマチ周辺以外は古い下町の景色がそのまま残っているところ。巨大な建造物と昭和の路地が普通に共存している。東京はやっぱり面白い街だなと思います。

押上のソラマチからスカイツリーを一度見上げ、隅田川の土手に出ると、一気に視界が開けました。川沿いの桜並木がずっと向こうまで続いていて、土手はすでに花見客でごった返しています。出店が並び、桟敷席まで設けられ、なかには向島の花街から芸妓さんを呼んで花見をしている粋なグループまでいました。

桜はまだ満開とまではいきませんが、流行り物好きの江戸っ子気質というのか、100年、200年昔もきっと似たような光景だったのだろうな、なんていにしえに思いをはせます。土手をのんびり歩きながら、春の隅田川べりで江戸情緒を味わいました。
言問橋のたもとから桜橋へ向けて、ゆっくり北上。土手の上から見る隅田川は広く、空も広い。なんだか時間の流れが少しだけゆっくりになるような感覚でした。

平山が毎日この街で自転車を漕いでいたのは、もしかしてこういう景色があったからかもしれない。そんなことを考えながら歩きます。
そして、映画に何度も登場する桜橋(X橋)へ。家出してきた姪と自転車で浅草へ向かう印象的なシーンや、平山が影踏みをするシーンも、この橋の下だったようです。

橋の上から見る隅田川と両岸の佇まいは、映画で見た景色そのままで、少し胸にくるものがありました。みんなで写真を撮りながら、しばらくぼーっと川を眺めます。
橋を渡りきり、反対岸を浅草方面へ。時刻はそろそろ17時近く。
「そろそろ、福ちゃん行こう」
一人がそう言い、2つめのメインスポット、地下街の焼きそば屋へと向かいます。
– 後編につづく –